師走に思ふ ~“正しい”新年~
旧暦(宇宙暦)12月19日
月の満ち欠けあと半サイクル(=約2週間)弱で新月(グレゴリオ暦1月26日)となり、いよいよ新年を迎える。
僕らが普段使っているカレンダー「グレゴリオ暦(=新暦)」ではすでに年は明けたことになっているが、旧暦(宇宙暦)ではこれからだ(旧暦=太陰暦、正確には太陰太陽暦)。旧暦(宇宙暦)の元日は一般に「旧正月」と呼ばれ、グレゴリオ暦の元日より1ヶ月~1ヶ月半ほど遅れる。これは旧暦(宇宙暦)における毎日の日付には客観的根拠にもとづいた意味があるのに対し、グレゴリオ暦にはそれがまったく存在しないためだ。その意味では「旧正月」のほうが“正しい”新年の幕開けといえる。
旧暦(宇宙暦)では、約29.53日周期で繰り返される月の満ち欠けキッカリひと巡り分を1ヶ月という単位とし、月が完全に欠ける「新月」が訪れるたびに翌月をスタートさせるという仕組みをとる。つまり旧暦(宇宙暦)では毎月ついたちが必ず新月となるのだ。それは毎日の日付と月のカタチが100%完全に連動することを意味する。毎月8日前後は上弦、15日前後は満月、23日前後は下弦といった具合に。日付を見れば月の形がわかり、月を見れば日付がわかるわけだ。天体の実際の運行をリアルタイムに反映した自然暦であり宇宙暦である旧暦ならではの機能といえる。
新月のとき月と地球と太陽は、太陽-月-地球の順に一直線上に並んでいる。地球の周囲をまわる月の公転軌道が宇宙に浮かぶ巨大な時計だとしたら、まさに針が0時ちょうどを指している状態である。旧暦(宇宙暦)は毎月このタイミングで新しい1ヶ月をはじめるのだ。
一方、グレゴリオ暦にはこのような機能はない。グレゴリオ暦は16世紀後半にキリスト教カトリックのための宗教暦として誕生したが、日付や月の決定に客観的根拠をもたないため、1年という大きなサイクル以外には周期や法則という概念が存在せず、理論として破綻してしまっている(これに関しては、また機会を改めて解説)。だから日付にまったく意味がない。1月1日という1年のはじまりのタイミングが、なぜこの日なのかという理由がそもそも存在しないのだ。
日本で旧暦(宇宙暦)が廃止され、グレゴリオ暦が新たに導入されたのは明治5年。明治政府による一方的かつ強制的な改暦は、日本で伝統的に行われてきた年末年始の挨拶や行事を、とんだ茶番におとしめてしまったというわけだ。
さて、旧暦(宇宙暦)1月1日は当たり前だが新月である。日本の旧暦(宇宙暦)では “1月”のことを「正月」と呼んだ。「正」に「年の初め」「年が改まる」といった意味があることに由来するという(『現代こよみ読み解き事典』岡田芳朗+阿久根末忠編著/柏書房)。そして年に12~13回ある新月のうち、この時期の新月を1月1日とするのは、「立春」に一番近いためだ。
「立春」は二十四節気で「春分」の約45日前にあたる日。「日」ベースではこの日から「立夏」までが春、「月」ベースでは「立春」に一番近い新月を含む1月~3月が春となる。春は農耕のはじまりでもあるが、「旧正月」の頃は実際にはまだ寒い農閑期だから、かつて「正月様」と呼ばれていた “歳神様”を家族そろって迎えられる。そうして豊作を祈るのが、旧正月の本来の位置づけであった。
お飾りや門松、初詣など、現在に至るまで続いている正月行事はたくさんあるが、そのほとんどすべては形骸化され、本来の意味は失われてしまっている。根拠も意味もまったくないタイミングを正月に設定しているのだから、無理もない。こうした文化の衰退を促したのがグレゴリオ暦であることは、最早いうまでもないだろう。
グレゴリオ暦を採用してはいるものの、アジアではほとんどの国でいまも旧暦(宇宙暦)や太陰暦ベースのローカル暦が公式に使われている。現在ではグレゴリオ的(あるいは欧米的)価値観のほうが勢いを増しつつあるものの、自然や宇宙の法則を内包したカレンダーがまだ生きていることの意味は大きい。東アジアでこれを公式に捨て去ってしまったのは日本と北朝鮮だけ。国のあり方は著しく異なるが、ともに文化というものが激しく衰退している点では共通しているといえるかもしれない。
文化が人類の創造力のたまものならば、文化的であるということは創造的であることを意味する。創造的でありたいと思う。だからこそ僕は旧暦(宇宙暦)を選ぶ。
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